「━━━━━━うそ…。」 深海の奥底にある、熱水マントル付近に取り残されたエアリーとシェリー。 シェリーが叫んだ探し人の名前を聞いて、エアリーも愕然とする。 「シェリー…、プロンジェがいたの…?」 「………えぇ。」 エアリーが恐る恐る問うと、シェリーは小さな声でコクリと頷いた。 エアリーには、シェリーの様子は見えないが…、 弱弱しい声を聞く限りは…ショックを受けているのだろう。 プロンジェを見つけてから去るまでのわずかな時間だったが、 大きな単眼がプロンジェに気付かないわけがなかった。 両手て口元を覆って黙っているシェリーの肩を手探りで探し、 やっと見つけたかと思うと、エアリーはギュッとそれを掴む。 「…どうしたの?何ここで突っ立ってるの?」 「………。」 「プロンジェは、まだ目の前にいるの?」 「………。」 暗闇に覆われているため、エアリーには何も見えない。 故に、プロンジェがそこにいてその場を去る場面が、エアリーには見えていない。 シェリーが叫んだ名前を聞いて驚いたとはいえ、 ショックの受け具合はその光景を見てしまったシェリーに比べれば、浅いモノで済んだのだ。 …エアリーに問われても、シェリーは黙ったままだった。 シェリーの目に鮮明に焼き付いている、プロンジェの姿。 右手に存在自体が有り得ないとされている兵器の装備や、 破壊された熱水マントルの目の前にいたこと………。 ━━━━━まさか、あのプロンジェがそんなことを………!!? 大きく目を見開いて、シェリーは…ふるふると震えていた。 身体が震え出せば、その場でしゃがみ込み胸元を両手で押さえる。 「ちょっ…、ちょっとシェリー!!大丈夫!!?一体どうしたの!!?」 「………っ!!」 シェリーの肩を掴んでいた手がふとガクンと下がり、エアリーはギョッとする。 何も見えないエアリーには…、シェリーにただ声をかけることくらいしか出来ない。 沢山の光を必要とする己の肉眼では、深海の光景を目にするどころか、 自分の傍にいるシェリーの容態を確認することすら、不可能だった。 ここは、シェリーに頼ざるを得ないのだ。 ………制御蓋が破壊され、熱水が噴射を繰り返し、巨大な間欠泉が多々発生し、海全体を温める。 しかし、制御に聞かなくなった温めはやがて海を熱くし、結果的には………。 結果は既に予測済みだが、なぜそうなってしまったのか。 その原因と思われる人物がまさかプロンジェにあるという現実は…、シェリーには受け入れがたいものだった。 「…っ!!シェリーッ!!シェリーったら!!しっかりしてよ!!!  ねぇ、一体何があったの!!?あれから、プロンジェはどうしたの!!!?」 「………。」 「黙ってても何もわからないわよっ!!ねぇ、本当にどうしたのよ!!!」 手探りで、シェリーのもう片方の肩を探し、先程掴んだモノを含め…両手で掴む。 シェリーが自分の方を向いているのか、それとも後ろを向いているのか。 それさえもわからない自分の無力さを、エアリーは密かに呪う。 エアリーが何度も叫ぶことで、シェリーがようやく重い口を開く。 「………プロンジェが………。」 「うん…、プロンジェがいたのね?それで…彼は一体どうしたの?」 「………プロンジェが、見たこともない…武器を装備して…海面に向かっていきましたわ………。」 「海面!?それって、大聖達がいる方向じゃない!  熱水マントルの破壊の原因を調べたら、早く行かなきゃ!!」 「熱水マントルの原因………。」 エアリーがシェリーの肩を掴んだまま、前に進んでくれと身体を引っ張るも、シェリーは動かない。 いや…寧ろ、見えないながらももがくように前に進もうとするエアリーの身体を、 白く長い…触手のようだ腕で阻んでいる。 深海のほんのわずかな光の反射したのか、シェリーの腕の赤い装飾がキラリと光った…。 暗くて見えなかったはずの赤い装飾。 こんな暗い所で存在を示すそれは、一体何を意味しているのか…。 「………そのご必要はございません。熱水マントルの原因を調べる手間は省けましたわ。」 「………え?」 前に進もうとするエアリーに、シェリーがポツリと呟いた。 大きく見開く単眼の瞼を半分だけ閉じて、目を細めてエアリーの方を見る。 「………行方不明の彼が、経った今お見つかりになったこと。  熱水マントルの以前からの破壊と、頻繁な熱水の噴射。  これは…、時期が偶然一致したなどとは思えませんわ。」 「えっ!?な、何言ってるのよ!それってまさか…! 「正直に言いますと、あたくしもあのプロンジェがこんなことをしたなど認めたくはございませんわ。  けれど、彼がここにいたということは…、熱水マントルの破壊に  彼がまったく関与しておられないと言い切ることも出来ません。」 「うっ………!?」 プロンジェがここにいたことがわかり、2つの問題の密かな繋がりを見い出したのだろうか。 シェリーが悲しそうにしながらも、ほんの少しだけ落ち着きを取り戻したのか…淡々と説明した。 その説明を聞いて、エアリーは更に困惑する。 しかし、プロンジェがここにいたということは確かな事実として存在する。 そのシェリーが言うのだから、何も見えていないエアリーはそう言われても反論が出来ない。 事実を見ていない自分には、シェリーの説明に反論する筋合いはないと気付き、 ならば自分もシェリーに従おうとエアリーは話を持ち出す。 「………わかったわ。深海でも見えてるあなたが言うのなら、きっと確かなのね。  それなら、そのプロンジェを追いかけるべく、わたし達も海面に向かうべきだわ。」 「えぇ…、そうですわね。あたくしも同じことをお考えしました。ただ………。」 「ただ………?」 「………。」 ━━━━━一瞬見えたプロンジェのお姿に…、恐ろしいモノを感じましたわ………。 「………。」 するべきことはわかっているのに、ある種の恐怖が行動に出るのを阻む。 自分が見たプロンジェは、自分が知っているプロンジェのようでプロンジェのようではない。 暗い深海から、光の届く海面…真上を見上げるも、もうプロンジェの姿は見えない。 プロンジェは、自分の姿に気付いているのかいないのか、一瞬の間に海面に上がっていったのだから。 未だ、かすかに身体が震えている。シェリーに身体を掴まれていたエアリーだけには、それがわかった。 シェリーの落ち着かない様子を見て、エアリーはまた…少し声をかける。 「…ねぇ、シェリー。」 「…なんですの?」 「もしかして…、プロンジェを疑ってる?」 「なっ………!?け、けっしてそんなわけではありませんわ!」 「でも、行動に移さないってことは、どこかでそんな気持ちを持ってるんじゃない?  『怖く見えたプロンジェに、自分が傷つけられたらどうしよう』とか…?  それを理由に、プロンジェが変わったってことから逃げても、プロンジェは変わらないわ。」 「………っ!!」 「プロンジェが恋しいんでしょう?愛しいんでしょう?  これはここに来る前も言ったような気がするけど………。  ━━━━━あなたがプロンジェを信じてあげなきゃ、一体誰が彼を信じるの?」 彼を信じるというなら、そうしたうえで今度はあなたが彼を助けないと。 プロンジェだって、一体どんな事情を抱えてるのかわからないし。 今は、彼を早く追いかけましょう。あなたは、彼等の主でもあるんでしょ? …どこかまだ揺れてるようだけれど、あなたは…自分が思ってる程器の小さい人じゃないと思うわ。 単純に考えて…器の小さい人に、館の主なんていう重要な役割は務まらないもの。 早く行きましょう。あなたは…彼をずっと待ってるんでしょう? 「………そうですわね………。」 エアリーの話に、シェリーは静かに耳を傾けていた。 こんな説得は、本人も言っているようにどこかで聞いたような気がする。 ただ、このようないたわりの声は、何度聞いても悪い気はしなかった。 落ち込んで、怖くなる度にこう励ましてくれる人がいるということは、…温かかった。 温かい…。それは、彼も同じでしたわね………━━━━━。 「ならば、このまま海面の方へご案内しますわ。」 「あっ!やっと決心がついたのね!」 「あなたのお話をお聞きしていましたら、なんだか馬鹿馬鹿しくもなりまして。」 「何よー!変に素直じゃないわねぇ。」 素っ気なくどこか捻くれたながらも、シェリーが微笑していることは声に表れていた。 そのシェリーの声を聞いて、エアリーもようやく安心出来たという笑顔で、笑って返した。 「行きますわよ。あたくしから手をお離しにならないように。  万が一離れて置いていかれたとおわかりになりましたら、とりあえず真上に進んで下さい。」 「もー、変にお節介ねぇ。行くなら『行く!』…これだけでいいのに。」 そんなことを言いながら、落ち着きを取り戻した状態で2人は海面へと向かっていく。 海面には、そのプロンジェを探している大聖達がいるはずだ。 プロンジェを追いかけるだけではなく、途中で大聖達と合流することも出来たら、とエアリーは考える。 ………暗い深海を抜けて、光の届く青い海にようやく戻ってきた。 深海を抜けるなり突然差し込んできた光に、エアリーは目の周辺を手で覆う。 「うっ…、眩しいっ…!でも、ようやくわたしの目でも見える場所に戻ってきたわ!」 「暗いところでも見えるというのも、決して望ましいものではございませんけれど…。」 「いいのいいの!さっ、青い海に戻ってきたわけだし、早いとこプロンジェを追いかけましょう!」 青い海に戻ると同時に本来の調子も取り戻したらしく、エアリーはガッツポーズを取った。 明るいところに出たなら、人の心も明るくなつというのはまさにこのことを言うのだろうか。 エアリーが元気よく声を上げて言うのを聞き、シェリーも「異議なしですわ。」と了解する。 そのまま青い海でプロンジェを探そうと動いたそのとき。 泣き顔を見せながら、クラインがこちらに向かって泳いでくるのが見えた………。 「?あれは…、クライン、だったかしら?」 「あら、本当ですわ。」 1人こちらにやってくるクラインを見つけ、2人は首を傾げた。 それでも、仲間のうちの1人を見つけたとのことで、2人ともまずはクラインの方へ向かう。 丁度合流したところで、クラインはシェリーのブラウスをキュッと掴み、泣きじゃくるように言う。 「お嬢様っ!!!お嬢様ぁっ!!!!」 「ク…、クライン!?一体どうしましたのっ!!?」 シェリーの服を掴むなり、助けを求めていると言わんばかりに叫ぶ。 その後、クラインが口にしたことは………。 「だ………、大聖さんが………!!!!プロンジェさんが………━━━━━!!!!!」 『ものまにー』 ━━━━━やはり、彼は死んではいなかったようだ。 プロンジェが鋭い目つきで睨んだその先にいたのは…、再び起き上がった大聖だった。 プロンジェが何も言わずに見つめる中で、大聖は握り拳を作って立ち上がる。 再び如意金箍棒を握り直し、『ブンッ!!』と振り回すと棒の先をプロンジェの方へ向ける。 それは、大聖のプロンジェに対するリベンジの申し込み。 ならば受けてたとうと、プロンジェも兵器の銃口を大聖に向ける。 「…プティ、オタリ。下がってろ。」 「大、聖、さん…っ!!?」 プロンジェから視線を逸らすことなく注意を促すのを聞き、プティは動揺の声を上げた。 「ここにいたら、お前達まで巻き込まれて、こいつに食われてしまうぞ。」 「おや、同じ館の住民にそんな残酷なことをするとお思いなのですか?」 「あぁ…。そのとんでもない武器を手にして、危険な行為に走ってる今のお前ならな。」 「…危険ですって?」 静かな怒りを宿し、大聖がプロンジェを睨みながら言うのに…プロンジェが少し顔をしかめた。 顔はしかめるも、その台詞に対し逆上するようなことはなく聞き返すあたり、 プロンジェは大聖が思っていたより冷静さと保っていた。 「こんなところでボサッとしてたら、殺されてしまうぞ。2人とも逃げるんだ。」 「…いいのかい?」 「あぁ、俺はいい。プティとオタリは早く逃げてくれ。」 互いに見つめたままやりとりを続ける2人の背後からオタリが話しかけると、大聖も頷く。 ………頼む。今は全力で戦わせてくれ。 お前達2人の生死がかかってるのと同様に、俺やエアリーの生死もかかってるんだ。 こいつがこのまま陸の世界に進出したのなら、どうなったかたまったものではない。 プロンジェの種族は、この海にいる種族の中では頂点だと聞いた。 ならば、世界は違えど同じ頂点の種族である俺がなんとかしなければという変な理屈もある。 確かにプロンジェは竜でも大蛇でもない。こいつと戦う理由を何かこじつけるとなれば、 それくらいしか思い浮かばない。…いや、寧ろそれなのか? 俺が実は神の力も隠し持っていて、それゆえに不死身だなんてことを…、 流石のプロンジェも考えつかないだろう。そうだとしても、あそこまで追い詰められて………。 全力でぶつかってみたくなった。アウェーでの戦いとはいえ…一度負けたことがどこか悔しかった。 皆の生死がかかっているという使命感もあるが、今は…俺自身戦うことを望み始めてるような気がする。 意識、競争、興奮。………なんなのだろうな。 「…プロンジェ。このままもしシェリーの元へ戻るというのなら、  もう一度俺を倒してから行け。」 「………大聖に引く気はなさそうじゃのう。」 「………そうですね。」 大聖が如意棒を振るうのを見てオタリが呟くのを見て、プティも同感だと頷いた。 これは、2人が大聖に託してみようという意思表示でもあった。 2人のこの台詞を聞いた大聖が再び駆け出せば、 プロンジェも兵器のエネルギーをチャージし始めた。 ………以前は与えられた命令のまま戦ったが、今回は少し違う。 ただ、それが逆にどこか楽しく思えた。 プロンジェが兵器のエネルギーをチャージし、放とうとしたその直前に、 大聖が飛び膝蹴りを行い、それを妨げる。あまりの早さにプロンジェは動くことが出来ず、 気付いた時点で兵器の真横に構えてガードを試みる。 『………ガコンッ!!!』 金属が打ちつけられるような音が鳴り、プロンジェは怯む。 一方、自分の体術が当たった大聖は、そのままプロンジェは後方に吹っ飛ばす。 …しかし、その後方というのは水の中。プロンジェがその中へ入らされる形を強いられば、 大聖も自ら突っ込んでいくように海へ飛び込んでいく。 大聖が不利なり、プロンジェが有利になる場所だ。 「くぅっ…!」 ガードした際の重みと衝撃に腕を少し痛め、プロンジェは表情を歪ませる。 後方へ吹っ飛ばされるも、水の中に落ちるとその衝撃と威力は和らいだ。 水の中に入った直後、今度はこちらの番だとプロンジェは宙返りを行い、体勢を整える。 プロンジェがそうしたほんのわずかな間に、大聖は海面に上半身を出し、金斗雲の術で水の中から脱出する。 『ザバァッ!!』と大きな水音を立て、大聖が空中から攻撃をしかける体勢に入る。 大聖が水の中から姿を消した。プロンジェがそれに気付くと大聖を追うように海面に姿を現す。 金色の雲に乗り、上から自分を見ている大聖と目が合った。 まるで挑発するかのように大聖がニッと笑うが、プロンジェはそれに誘われることなく海面付近を泳ぎ回る。 背鰭だけが海面から出たままで、一見それは海豚が背泳ぎをしているようにも見えた。 すると、プロンジェが向きを変えて銃口だけを海面から覗かせる姿勢を取った。 水の中から大聖の狙いを定めて、先程大聖を打ち負かした追跡式魚雷を放つ。 水の中から沢山のそれが発射されたのを見て、 大聖が金斗雲に乗ったまま如意棒を構え、空中をありとあらゆる方向飛び回る。 「さっきはこれにやられたが、ニ度もそうはいかないぞっ!!」 自分の追跡する魚雷に当たらんと加速し、ギリギリのところで避ける。 金斗雲に乗ったまま身体の向きだけを変え、 「………硬くなれっ!!」 自分の意思を如意棒に伝え、それを硬く頑丈に凝固させた。 その後、自分に迫る沢山の魚雷が自身に命中するすれすれのところで、 『…バコォオンッ!!!』 …と如意棒を振るうことで破壊した。 同じように、自分に襲いかかる如意棒も破壊せんと、大聖は如意棒を振り回し、 自分の迫る魚雷をすべて破壊し、攻撃から逃れた。 その鮮やかな光景に、プロンジェは密かに舌を巻いた。 それでも、命令を与えられた自分が押され続けるわけにはいかないと、 プロンジェは再び大聖に狙いを定め、レーザーを放とうと集中する。 海の中に向こう、空を飛び回る大聖が自分の丁度目の前に来るその瞬間を見逃さない、 プロンジェは精神統一を行い、自分の正面の通り過ぎるその瞬間を狙う。 その際、海面から突き出していた銃口を海の中へ沈めた。 「なっ………!?」 青くて、遠くからではよく見えない海の中からの攻撃のを探るその手段。 それを隠されたことにより、今度は大聖が困惑の声を上げた。 「いや………。」 困惑の声はあげてしまったものの、取り乱してはいけない。 落ち着いて、プロンジェの攻撃が一体とこから飛び出すのかを、よく観察する。 自分の回り…360度すべて見回すことで、プロンジェがどこから攻撃してくるのかを待つ。 「………。」 プロンジェが動かなくなったのと同様に、大聖も動かなくなった。 水中と空中から互いに見つめる形となり、一時的に攻撃をやめた。 ………おそらく、一緒に攻撃をするとなれば、ほんの一瞬が隙になるだろう。 ならば、相手が攻撃してきた後に反撃しよう。 大聖とプロンジェの考えたことは、………同じだった。 暫くの間、互いに動かず沈黙が続く。 ………しかし、この沈黙は、 「━━━━━あっ!!!あのお兄さんだわっ!!!間違いないっ!!!」 ………この青い海に、自分を追って戻ってきた、 エアリーによって破られることになる。 自分のことを指すエアリーの台詞に、プロンジェはハッとして、振り向いてしまう。 その反応は変化となり、海面にも表れていた。 そこを、大聖は見逃さない。 大聖は、金斗雲を台に、 「それまでだああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 思いっきり叫んで、プロンジェに向かって如意棒突き出した。 水中へ飛び込んだ直後も、よそを向いてしまったプロンジェの胸部に向かって、 如意棒で突き攻撃を繰り出した。 『━━━━━ドンッ!!!!』 「━━━━━うあっ!!?」 大聖の繰り出された攻撃は、プロンジェに命中した。 胸部を強く打ったプロンジェは、意識が消えてゆくのを感じた。 ━━━━━ヒュンッ………━━━━━。 「………え?」 その音は、プロンジェは近づこうとしていたエアリーだけに聞こえた。 また、その音が聞こえればその瞬間に見えた何かも、エアリーだけにわかった。 ━━━━━今、プロンジェから何か…白いのが出てかなかった………━━━━━? それは、ほんのわずかな時間。 エアリーの目に見えたのは、 まだ見たことのない白い服に白い髪の少年が…この海の中から飛び出すという変な光景だった。 「━━━━━プロンジェッ!!プロンジェったら!!!」 エアリーがそれに目を奪われているそのよそで、 ようやくプロンジェのところへ辿り着いたシェリーが、 意識を失ったプロンジェの身体を必死になって揺さぶっていた。 エアリーとシェリーの声が聞こえ、大聖が振り返れば、 陸の氷河に避難していたプティとオタリ、 そして深海にいた2人に助けを求めたクラインも駆け付ける。 シェリーの白く長い腕に抱えられたプロンジェが、軽く身体を揺さぶられていると。 「………うっ………。」 意識を失ったことにより閉じられた目は、薄らと開けられた。 そして、ぼんやりする頭で、プロンジェは━━━━━。 「━━━━━お…、おれは一体………今まで、何を………━━━━━??」 目を覚ますなり呟いた最初の台詞に、この場にいた全員が固まってしまった。 『E-09 こいびと』に続く。