「━━━━━え!?」 突然、何を言い出すんだろう。エアリーは驚いた顔をして大聖の顔を見た。 …大聖の表情は真剣そのもので、何かを捨てて何かを決心したというふっきれた様子。 これまで…、自分と共に行動してきて、もともとは…自分と行くことを望んだ大聖。 その大聖が、自分とは離れて別の道へと行こうというのだろうか。 「…ちょっと大聖、それこそどういうことよ?」 「本当にすまない。…先程の爆発を見て、思うことがあるんだ。」 エアリーが自分の道を行く権利があるのなら、同じように大聖にもその権利がある。 それは、この場で出会ったシングレースのように、自分の居場所を探すということと同義。 一体どうしたのだと問うことは出来ても、大聖がそれを望むなら…自分に駄目だという権利はないだろう。 ………大聖も、エアリーの目的とは違った目的を持ち始めていた。 これまで、宮守やプロンジェと戦ってきた大聖だが、 今思えば…、なぜ自分はこの2人を戦う道を選んだのか。 その理由が…自分の中で定まっていなかったのだ。 人間を脅かす大蛇や竜を、人間を守る神として退治しろという命令。 騒動を起こしている者があの館の者だと知り、彼を食い止めて更生させるという指示か。 いずれも…、根本的なところを言うと、自分が本当に望んで戦ってきたわけではなかった。 ただ、その2人と戦う中で…大聖も大聖なりに楽しさや幸せを見つけることが出来た。 ━━━━━きっと、外の世界に出てありとあらゆるモノ達に出会いたかったのだろう。 その楽しさや幸せは、まだ口では説明することは出来ないくらいの小さなモノではあるが。 ━━━━━俺は…あの暗い洞窟から飛び出して、自分が惹かれるままに外で過ごしたい…のか? 自問自答する。その答えはどんなに時間が過ぎようが自分自身にしか出せない。 そして…、今回惹かれたのが女性2人のいう黒い炎だった。 倭国の外れの惨劇、海の世界の死体の数とこれまでロクなモノを見てきてはいない。 単に、自分が喜劇より悲劇に惹かれる気質なのかもわからないが、 ごく平凡な日常の中で、いいことも…悪いことも含めた変化を見つけることが好きなのだろうか? その変化と向き合うことで、自分の存在意義を見い出そうとしているのだろうか。 確かに、あの暗い洞窟で過ごしているときは、自分の存在意義なんてまったく考えなかった。 多くの生き物が、怪物が生まれて死ぬ中で、不死身である自分だけが取り残されるという苦悩。 …その苦悩を解消するため、と言われるとそれまでかもしれないが、 何やら…自分は変化を目にし、その中で飛び込むことで楽しさを見つけようとしているようにも思えて。 ただ、それが今の自分の生き方になっていると言われても…やはり自信がなかった。 しかし、だからこそ事件の中へ飛び込むことで自分の道を見つけようとしている。 その行為が、自分の希望を探すことだけではなく皆の助けになるならば…本望だ。 「理由は…今は聞かないでくれ。俺自身、胸を張ってそう言える自信がまだないんだ。ただ…。」 「…ただ?」 「俺も、お前達と同じように…自分の道を探してみたくなった。」 戸惑いながらも首を傾げるエアリーを見ながら、大聖は真剣な表情でコクリと頷く。 『自分の道を探してみたくなった。』…この台詞を聞いたシングレースがエアリーに近づく。 それは、大聖が自分から離れるという不安が消えていないエアリーに、 「………行かせてみたらどうかしら?」 と言って、エアリーの背中を押す。 これまで聞くことのなかった台詞に困惑するエアリーとは逆に、 シングレースは喜んで送り出すという態度だった。 「自分の道を探すって、簡単なようで難しいものよ。運とかも絡むし。  ただ、一度離れて過ごしてみるっていうのはアリかもね。  他人がいるときは、どうしても誰かばかりに目を向けがちなのよ。」 「シングレース…?『誰かばかりに目を向けがち』って?」 「他の人が傍にいると、特に自分と似たような道を歩んでる人がいると、  …自分のことを見ずにその人ばかりを見ちゃうってこと。  自分を見つめ直したいとかっていうなら、あえて1人で行動してみるのはいいんじゃない?  まぁ…、悪く言えば他人に無関心になっちゃうってところだけど、自分の人生は自分のものでしょ?  他人を意識して集中出来ないくらいなら、自分自身だけを見て考えてみたら?」 「………シングレース。」 悩んでいるエアリーに、シングレースは可愛らしく微笑みながらそう話した。 シングレースに言われたエアリーは、大聖の方を再び見る。 しかし…、その表情は寂しそうなものだった。かといって、シングレースの意見を否定はしない。 ………振り返れば、もともと大聖は自分の望みによって外に出たようなものだ。 自分を含め、何かに、誰かに従いそれにまっとうするような真面目気質な大聖。 自分やバイメン、シェリーに従ってきた大聖だって、…自分の望みで行動したくなってきたのだろう。 他人に従ってばかりで嫌気が差したというネガティブな気持ちなのか、 それとも、他者の視線や命令を振り切って自分の足で進みたいというポジティブな気持ちなのか。 ただ、一番近くで大聖を見てきたエアリーには…シングレースのいうことは痛感出来た。 それを理解して…寂しそうながらも微笑する。 エアリーが笑えば、大聖も少し寂しそうながら笑う。 「俺がいなくなっても、お前にはシングレースがいるじゃないか。それに…。」 「それに…?」 「一度離れても、俺はまたいつかお前の元へ戻る気でいる。  だってお前は、俺にとって…一番の人間だからな。」 「………っ!!!」 ━━━━━黒い炎と大爆発の原因を突き止め、 自分が本当に何をしたいのかの答えを出せたら、お前の元へ帰ってくる。 微笑する大聖がそう言うと、エアリーも…嬉しそうに顔を赤くした。 目を大きく見開き、口元を両手を覆い…大聖の言葉を受け止める。 仮にも神である大聖にとって、自分が一番の人間。 この台詞を聞いたとき、エアリーの心の中で…何かが光った。 …口元を覆っていた両手を胸元に移し、エアリーも深く頷く。 「………わかったわ、大聖。」 これまで自分と共に行動し、守ってくれた大聖を今更疑うようなことはしない。 行きたい道があると大聖が言うのなら、…自分もそれを応援するだけだ。 エアリーが静かな声で言うと、大聖も目を細めて、 「………ありがとう。」 …と、穏やかな声で御礼を言った。 ………その後、大聖は自分の術である金斗雲に乗り、空高く舞い上がった。 エアリーにはエアリーの望みがあるように、大聖にも大聖の望みがある。 ━━━━━2人は、自分の道を行こうとしている。 「エアリー!シングレース!お前達にはお前達のやりたいことがあるだろう!  俺も自分のやりたいことをしにいくが、お前達との縁を断つつもりはこれっぽっちもない!!  俺は…それを終えてから、お前達の後を追いかける!!」 空高く舞い上がっては、強く大きな声でそう叫んだ。 片手には、自分の武器である如意金箍棒を片手で強く握りしめ、 「━━━━━ではっ!!行ってくるっ!!!!」 この台詞を最後に、大聖は2人の前から姿を消した━━━━━。 ………。 「━━━━━小柄ながらも力強い感じの獣人ね。大聖って。」 「………うん。」 大聖が、2人の前から飛び去った後のこと。 関所に残されたエアリーとシングレースは、関所から見える空を眺めていた。 黒い炎が舞い上がり、大爆発が起こったという割には…空は穏やかなままだった。 そこに妙な不自然さを抱くも、そちらの件は…悲劇になる前に、大聖がきっと止めてくれる。 そう信じて、2人は関所の出口のくぐろうと歩き出す。 「じゃあ、わたし達もそろそろ行きましょうか。」 「えぇ、そうね!一度アタシも、アナタの街のお店見てみたいし!」 女性2人が互いに微笑むと、関所を出て街に続く道と歩いていった。 「ねぇ、そう言えばエアリー。」 「何?シングレース。」 「そうそう、その呼び方なの。」 エアリーの街へ徒歩で向かうその道中。 シングレースが自分の呼び方を気にしていたのか、エアリーにそう促す。 シングレースに話しかけられ、会話が始まるにあたって2人は草原の道で立ち止まる。 「『シングレース』って呼び辛くない?名前長いでしょ?」 「へっ?…別にわたしは何も感じてないけど…。」 「そう?でも…気軽に呼ぶならもうちょっと違う呼び方してもいいのよ。」 「違う呼び方って…例えば?」 「そうねぇ…。フルネームの一部をニックネーム化して呼んでみるとか。」 「ニックネームかぁ…。」 首を傾げながら言うシングレースに、エアリーも右親指を自分の顎に当てた。 少なくとも、今まで会って話してきた者達に関しては…愛称なんてものは考えたことがなかった。 唐突に違う呼び方をしてもいいと言われても、咄嗟にポンポンとアイディアが出てくるわけではない。 エアリーは、ちょっと悩ましそうにしていた。 「うーん…。シングレース、シングレース、シングレース、シング、レース…。」 かといって、愛称をつけて呼んでいいという好意的なことはそうない。 このような機会はある意味では貴重だ。それに…シングレースがそうしてくれた方が喜ぶのなら、尚更かもしれない。 エアリーは、悩んだ様子でシングレースの名を何度も口ずさむ。 …シング?…シングって言いやすいかしら? 「どう?何か思いついた?」 「うん。シングレースの希望に沿ってるかはわからないけど…。」 「あ、何々?言ってみて!」 「わかったわ。………『シング』なんでどうかしら?」 「『シング』…。…うん!言いやすくていい愛称ね!」 ネーミングセンスには自信がなく、単に言いやすいからという理由で名付けたものの、 シングレースはそれを気に言ったのかニパッと笑った。 「ウフフッ、ありがとエアリー!!」 「…これでよかったの?」 「いいのよ!!アタシ、その愛称気に入ったわ!!」 「そう?…気に入ってくれてよかったわ…。」 嬉しそうにはしゃぐシングレースを見ながら、エアリーも安心したように笑った。 「シング、はしゃいでないで街に行きましょうよ。  こんなところで話してたら、時間が過ぎちゃうわ。」 「アハハッ!そうねっ!行きましょうっ!」 楽しそうにしているシングレースにエアリーが言うと、シングレースも頷いた━━━━━。 『ふしぎ』 ━━━━━3人が別れの挨拶を交わしたその関所の傍にあるようで、ないような場所。 時間帯は日中、しかし空色は深い黒で覆われている。 その中に、一際存在感を放っている月が、闇を照らし…人々や生物に安らぎを与えている。 人々は歩いてはいるが、生物らしい生物は見かけない。 それの代わりに見かけるのは…本来、生物の世界では存在しない怪物達。 街は寂れてはいないものの、どこか気味悪さを漂わせている。 その街の建物の中に、紛れ込むようにひっそりと建っている。 一見は…ただの何の変哲もない建物に見えるが、その中に入ってみると…そこは牢獄。 そこで囚われ、処刑され、そして死んでいった者達の多くは巨躯の身体を持っていた。 鉄格子や散らばった手錠には、その受刑者が何人目なのかを示すナンバーが記されていた。 墓場とは別の気味悪さを漂わせるこの牢獄に、1人の女性がなんの躊躇いもなく侵入する。 その女性は、濁った水のような黒く長い髪を持ち、黒い布を纏っていた。 そして、暗い色の服飾が多い中でアクセントとなっている裸足。 鎖、破片、手錠と沢山の物が床に散らばっているのにも関わらず、 その女性は平気そうに牢獄の中を歩いていく。 片手には、黄色で透明なワインらしき飲み物が入ったグラスを持っている。 「………ったく。」 いかにも『嫌です。』と言っているようなめんどくさそうな顔。 それを紛らわすかのように、グラスを口元へ持っていきその場で飲酒。 ゴクゴクと荒っぽく飲んだかと思えば、酒を含んだ息を吐く。 美しい見かけに反して汚らしいその仕草に、牢獄に僅かに残る者達は…皆見て見ぬふりをする。 そして、誰もいない空間をまっすぐに見つけ、嫌そうな顔をしたまま問う。 「なんなのよ、話って。」 明らかに文句のありそうな態度で言うと、女性は視線を向けたその先から1人の男が現れる。 薄紫色をした髪から生えている2本の角。肩だけを出した長袖に裾の長い独特な服装。 そして…この牢獄に囚われていることを証明しているような、手錠に足枷、鎖が沢山ついている人物。 女性の方がめんどくさそうにいうと、姿を現した男の方はニヤリと笑って答える。 「いんやぁ?別にぃ?気にくわねぇヤツがこの地に入りやがった。  それがオレの癪に障っただけさ。だからその酒よこせ。」 「あんた、そんな理由であたしにここに来るように言ったわけ?馬鹿みたい。」 「馬鹿とか何とか言われようが関係ないね。オレはただ酒が飲みてぇだけ。」 「癪に障ったっていう気分を紛らわすため?」 「わかってんじゃねぇか。だったら早くよこせ。  よこさねぇっつったらオマエの身体ごと飲み込んじまうぜ?」 女性の片手に持っているグラスに、男は手を伸ばす。 男が伸ばしてきた手から避けるように、女性はグラスを持った手を後ろに引く。 自分がほしいから。…たったそれだけの理由で手を伸ばしたものの、 それを阻まれたことにより、男の方も不機嫌そうにしている。 そうして、女性を脅すようなことを言って、無理にでも奪おうとする。 赤く不気味な目をギラリと光らせて言うその様子に、 力づくでは敵わないと観念したのか、女性は自分の持つグラスを男に渡す。 「けっ。わかってんじゃねぇか。そうこなくっちゃな。  解放したてでそんなひでぇ対応されちゃあ、気分が悪いぜ。」 「あんた、相変わらずね…。ドラゴンも酒が好きなの?」 「別にぃ?酒飲んだら気分がよくなるっていうだろ?  特別ドラゴンとか竜だからとかの種族は理由にならねぇよ。」 そのグラスがどんな物であるのかを知ってか知らずか、男はグラスに入った酒をすべて飲み干してしまった。 男ののみっぷりと酒が一瞬で無くなったグラスを、女性の方は少し口をポカンと開けて見つめている。 ………そのグラス、さっきあたしも口にしたんだけど。 地味に間接キスじゃない。あんた、そういうものなんともないの? 「…ぷはぁっ!気分が悪いときの酒はいいもんだぜ!」 「そっ…、そう…。」 酒をすべて飲み干すなり、今度は笑顔を見せていう男性に、女性は苦笑いを浮かべた。 しかし、苦笑いを浮かべていたその表情から一変、女性は深刻そうな顔で男に尋ねる。 「…ところで、なんであんた自由に動いてるの?  あんたは確か…最近までこの牢獄に囚われてた竜人でしょ?」 「あんだよ、いいじゃん別に理由なんて。どこで何しようがオレはオレだ。」 「…出た、あんたのそういうところ。そこも変わらずね、竜のプラソン?」 「このクソソマ。この牢獄ん中で名前言うなよ。オレが自由に動けるようになったのバレるじゃねぇか!」 ソマと呼ばれた女性が疑いの視線を向けると、竜…プラソンはそれを突っぱねるような態度で返した。 少しご立腹な様子のプラソンに、ソマがくつくつと笑って開いた片手から何かを取り出す。 それは、部屋に籠っているときに外の様子を覗くときに使う、占い等に用いられる水晶玉だった。 その水晶玉をプラソンの顔の目の前に近づけさせ、中に移る光景を見せながら話す。 「…でも、あんたのその様子見て、さっきの黒い炎と爆発の原因はわかったわ。  ま、あいつらがあたし達の存在にはまだ気付いてないみたいだからセーフだけど。」 「あん?アイツらって誰だよ?」 「傍にあるようでない、見えるようで見えないこの世界に入ったやつらのことよ。」 「この世界に入りやがったヤツらだって?」 ニヤニヤと笑いながらソマが話すのを聞き、プラソンは怪訝そうな顔をする。 「黒い炎と爆発で、この世界の存在が外部のやつらにバレちゃったわけ。  その原因は、知ったことじゃないだろうけどあんたにあるのよ。」 「バレてもいいじゃねぇか、別によ。」 「そういうと思ったわ。ちなみに、その自信と理由は━━━━━。」 「ソイツら皆オレが食う。それだけだ。」 ソマが呆れた様子で言うが、プラソンは寧ろ来いと言わんばかりに腕を振っている。 「この世界はオレのテリトリーだ。1人たりとも逃さねぇ。」 「その1人たりともの中に、あんたが大っ嫌いな神様が含まれてても?」 「あんだって?」 喧嘩腰にプラソンが言うと、ソマが片手に持っている水晶玉を更に近づける。 透明で透き通った水晶玉の中に移っている光景は、外部の何人かがこの世界に入ってくる様だった。 その何人かの中には…神と思われる者が、1人か2人。 その姿を見た直後、プラソンの顔は物凄く気に食わないという恐ろしい形相になる。 その表情を見て、ソマは数歩後ろに引く。 「(………ヤバイ。やっぱりこいつだけには教えるんじゃなかった。)」 後悔したところでもう手遅れだとはわかっていながらも、ソマは引きつった顔をする。 プラソンは…、ギリギリと牙を食いしばり、両手に握り拳を作る。 拳を握る際、手のひらに自分の爪を食いこませている。痛くないのだろうか。 黒く長い、妖しい光を放つ爪ところどころには、赤い何かが付着していた。 その何かは、プラソンをときどき監視していたソマなら、すぐにわかった。 ━━━━━あぁ、こいつ多分…動けるようになったなり速攻で殺して食ってきたんだわ…。 「………おもしれぇ。やってやろうじゃねぇか。」 「………え?」 『ガシッ。………パキャアッ!!!』 「なっ!!?ちょっ…!!ちょっとあんた、何してんのよっ!!!」 敵意に敵意を返す。その意思を呟けばソマの水晶玉を乱暴に鷲掴みにする。 大きな手でしっかり掴めば、握力だけで水晶玉を粉みじんにしてしまった。 壊された水晶玉はもう水晶玉とは言えない、ただのガラスの破片となって地に落ちる。 驚愕と困惑、そして恐怖の3つを織り交ぜた感情をソマが出せば、 『だからなんだ!?』とプラソンは威圧するように睨み返す。 殺気も共に放っているそれに、ソマは何も言い返せなくなる。 自分の水晶玉を理不尽に破壊されたことに対して言おうとした文句を押さえ、 ソマは口を止め大きく見開いた目で…プラソンを凝視する。 ━━━━━ここで反論したら、あたしは確実にごっくんだ。 「神の連中が来てるんなら、オレもケリをつけてやる。」 それは、たとえ自分のような月から産まれた神の酒であっても。 「━━━━━善人気取ってる偽善者こそ、」 ストレートなことを言うその様は、己の感情を抑えることを知らない。 「━━━━━他者を嫌われ者にしやがるクソ独裁者こそ、」 嫌いで、嫌いで、嫌い過ぎて………相手にも事情があることを知ろうとしない。 「━━━━━消 え る べ き な ん だ よ っ ! ! !」 自らの手で“光”を捨てたその赤い瞳は、黒い渦を起こしている。 この世界で…精神的に厳しい状況に置かれた彼等…竜を、神々はどうするのだろうか。 Fパート完結。Gパートへ続く。