入った部屋の中にいたのは、かつては敵対した者。 赤い髪に長く黄色い、そして三日月の装飾が施されたバンダナ。 獣のような黄土色の肌。…その誰かがその人物であることに気付くのには、時間がかからなかった。 『ゆうわく』 「━━━━━おい…!ありゃあ大聖じゃねぇか…!!」 「あん?あんた達この坊やの知り合い?」 奥の部屋に入った際みたその姿は、宮守と井守が知っている大聖だった。 大聖の名前を叫んだ宮守に続き、井守もその姿を見て驚愕の声をあげる。 …大聖は、意識を失った状態でソマに弄ばれていた。 比較的小柄な体格を抱き上げられ、膝に乗せられていた。 「おーい!!大聖っ!!あんた、大聖だろう!!?」 両腕を振って井守が呼んでも、大聖からの返事は返ってこなかった。 その様子をよく見ると、瞼を閉じてぐったりとしていた。 そんな大聖の身体を持ち上げながら、ソマがこの部屋に入ってきた少年少女の方を見る。 ゆっくりと向けられたその瞳は、男性なら堕ちてしまいそうなくらい妖しいものだったが、 精神的に幼い井守と元々女である宮守には、逆効果だったようだ。 2人は、剣を構えてソマを睨みつける。 突然現れた2人に、ソマは大聖と2人を交互に見て話しかける。 「へぇー…。まさか知り合いが来るなんて。」 「………大聖を離せ。」 ソマが大して興味のなさそうな様子で呟くと、宮守が剣先をソマに向ける。 しかし、そのまま切りかかることはせず、ソマの出方を窺う。 宮守が小さく唸り声をあげる一方で、井守が険しい顔で叫ぶ。 「おいっ!!あんた、大聖に何したんだっ!!」 「あら、別に何もしてないわよ。あたしはこの坊やと遊んでただけ。」 「嘘こくな!!ただ遊んでただけで意識なんて失うわけねぇだろうが!!!」 「あっはっは!!そう怒らないの…。あんたはあんたで、その可愛い顔が台無しよ。」 「うっせぇ!!褒められても嬉しくねぇわ!!このゲス女!!!」 「お褒めにあずかりまして。光栄なことよ。」 「褒めてねぇっ!!!この━━━━━!!!」 『ガシッ!!!』 井守が許せないと憤慨した様子で怒鳴り続けるも、ソマはそれを適当に流す。 卑しい者のことを指す言葉を褒め言葉と言うあたり、他者の言うことをそれほど気にしない気質なのか。 ソマが軽くあしらうように言うのが癪に障るらしく、井守は熱くなって反論をし続ける。 …しかし、その行為が逆にソマのペースに巻き込まれていることに気付き、 宮守は井守の肩を乱暴に掴み、落ち着かせる。 「落ち着け井守!!相手のペースに巻き込まれてることに気付かないか!!?」 「っ…!?」 ソマを睨んでいた目を自分に向けられ、反論は遮られた。 熱くなり冷静さを失っていたが、宮守にそう言われたことで井守はハッとする。 それで、実際に宮守に言う通りになりかけていたことに気付くと、 宮守に「………悪ぃ。」と小さい声で謝った。 それを見て、宮守は一先ずはと安堵を示す小さい息を吐く。 落ち着いたところで、宮守と共に剣を構える。 一見は大聖よりも背が低く、更に幼く見えるこの2人にソマは笑いしか出ない。 「うふふ…。あら、あんた達もお姉さんと遊びたいの?  でもごめんね。今はこの坊やと遊んでる途中なのよ。  それに、お姉さんと遊ぶには…、あんた達じゃちょっと小さすぎるわ。  お姉さんの遊びは刺激が強いわよ?あんた達には毒にしかならないかもね。」 「ふん…、それこそ油断だな。」 「あら…何ですって?」 「何でも、外見だけで判断してもいいのか?」 ソマが妖しく笑って誘うように言うが、宮守はその挑発に乗ることなく不敵に笑う。 すると、今度はソマが眉を寄せ…表情を少し歪めた。 ソマの様子の変化を確認しつつ、井守に自分達の正体を明かさないように目で促してから、宮守は言う。 「力の強さは年や体格の大きさに比例はしないぞ?  甘く見ていると、おまえが痛い目に合うかもな。」 「見かけに寄らず口達者なのね、そっちの女の子は。」 「それが油断だと言ってるんだ。おまえは…この世界に存在する神酒だろう?」 「…なっ!?なんであんたがそれをっ!!?」 「さぁな。それで…大聖がそんなことになってることも薄々わかってる。  おまえ、神酒そのものである身体を大聖に飲ませたんだろう。  あの大聖が好んで酒を飲むことはなくとも…、飲んでしまったならそうなるのは無理もないことだ。」 「あんっ!?じゃあ、やっぱこいつの仕業なんだな!!おれらのダチにこんなことしたのは!!!」 「他に誰がいるんだ。」 忠告の意味を含ませて宮守が言えば、そこまではソマも軽くあしらえたものの、 ふと自身の正体を口にされると…困惑した様子で顔を強張らせた。 自分の正体に関連したことを追い討ちのように言われると、更に戸惑いを見せるソマに、 宮守がニヤリと笑って説明をする。…それを聞いた井守が、 ここに来たばかりのときに抱いていた不安など忘れて言う。 井守の台詞に、宮守もコクリと頷いた。 自分の正体を見抜かれた以上、ソマは逃げ道を失った。 宮守が神酒のことを知っているのなら。また、剣という強さの象徴を持っているのなら。 宮守と井守に迫るつもりが、逆に迫られていることにようやく気付くと、 ギョッとして辺りをキョロキョロする。 ………いくら特殊な力を持っているとはいえ、この悪女に戦う力はない。 自分がやられることはなくとも、この2人を退けなければいずれは追い詰められてしまう。 「なんなら………!!」 戦う力や知識のないソマは、一か八かという様子で身体全体を液状化させ、 巨大な酒の波となって2人に襲いかかる。 『ザバァッ!!!』 「………んなっ!!!?」 酒の波と化したソマを見て、井守が思わず声をあげた。 それは、まだまだ知らないことの多い井守なら無理もないことだった。 人が…まさか溶けて液体になるなんて、考えもしなかったからだ。 「おいっ!!宮守!!ここは逃げようぜ!!いくらおれらが剣を持ってても、  身体が液状化しちまったら歯がたたねぇよっ!!」 ………これは流石の大聖も、攻撃することすら出来ないわけだ。 井守が焦りを見せながらそう促してた一方で、 宮守は、どういうわけか笑っていた。 先程の敵意はどこへやら、大好物の食べ物を目にしたときのように、ニコニコと笑っていた。 井守と違って、宮守は酒の津波から逃げようとしない。 宮守の様子を見て、井守の脳裏にある光景が過ぎる。 「ちょっ………!?宮守、まさかあんた━━━━━!!!!」 宮守がソマに何をしようとしているのかをようやく察し、井守は驚いた顔をして、 「━━━━━久しぶりの好物だ!!!思いっきり飲むぞ!!!!」 いつの間にか杯を用意した宮守のとんでもない行動を、ただ見ることしか出来なかった。 宮守のこの台詞を聞き、ソマの頭の中が真っ白になった。 ………これは、ヤバイ。 嫌な予感しかしない。 そのような気持ちを抱いても、小回りの利かない酒のウェーブに、 今更ブレーキをかけることなんて出来ない━━━━━。 ………。 「━━━━━あっはっはっはっはっは………!!!」 酒の津波が完全に止まったときのこと。 もはや意識を失った大聖のことなどそっちのけで、宮守は神酒を飲んでいた。 部屋全体が神酒に満たされたその中で、甲高く笑い声をあげている。 飲んでも飲んでもその収まりを見せない宮守を前に、ソマは一気に弱腰になってしまっている。 それもそのはず、宮守達大蛇(おろち)は酒が大好物なのだ。 かつて求めていた(食用としての)美女に並ぶか、それ以上なくらいに…酒をこよなく愛する。 ソマの神酒の身体は、誰かに飲ませても暫く立てばまた再生するらしい。 大聖に同じことをした後、元の人型に戻っている様からそのことが窺えた。 だが…今は宮守の酒を飲むペースに再生能力が追い付かず、 ソマの身体は足から胴、銅から胸とどんどん部位がなくなっていっている。 先程までソマに敵意を出していた井守も、その神酒の精霊のようなはずだったソマを見て…哀れな気持ちになった。 それはこうなってしまう前の…妖しくも美しい姿と比較すると、物凄く情けない姿だった。 「あああああ…、お、お願い!!もう飲まないで!!あたしの身体なくなっちゃう!!!  それイコールあたし死んじゃう!!あんたに何もかも喰われちゃう!!!」 「………あんた、案外苦労してんだな。」 みっともない姿でソマが宮守に泣き付くも、当然のことながら宮守はそれに見向きもしない。 そんな2人の様子に、井守が大きな溜息をついてから…小さく呟いた。 …とはいえ、そんな井守もソマを庇うことはせず、 仲間に手を出したという罰だと割り切ってほったらかしにされている大聖の方へ近づく。 「………おい、大聖。しっかりしろ。」 「………うぷっ………。」 ぐったりしている大聖の身体を揺さぶると、大聖が僅かに声をあげた。 ………やっぱり、既に酒を飲まされたためか、大聖は気持ち悪そうにしていた。 こうなってしまった原因はわかっているとはいえ、1人置いてけぼりにされたような気分な井守は、 「………まったく、どいつもこいつも………。」 ………と、呆れた顔で大きな溜息を、もう一度。 大きな溜息をついた後、井守は大聖の身体を起こし、壁にもたれかけさせる。 大聖の顔は真っ赤だったが、目は座っておりしゃっくりを何度か繰り返していた。 「…おーい、大聖。」 「…うっ…ひっく…。」 「聞こえるか大聖ー。おれだよ、井守だよ。」 「………んっ、いもっ………?」 壁にもたれかけさせた大聖の肩を軽く叩きながら、井守は声をかける。 すると、大聖も遅いながら反応を示し、俯き気味だった顔を少し上げる。 上目遣いで井守の方を見ては、ぼんやりとしたままの意識で自分を呼ぶ声を聞く。 ………井守と目があった。 酔いと眠りの覚めない目を手で擦り、ぼやけた視界を少しでもはっきりさせようとする。 簡単にそれをしてから、ほんの少しだけ目を見開くと、 目の前の自分の知る井守がいることにようやく気付き、大聖は不思議そうな顔をする。 「…ぅえっ?な…なんで井守、お前がここに…?」 「『なんで?』じゃねぇよ。そりゃあこっちの台詞だっつーの。」 …同じように酒を飲んで酔っ払っているとはいえど、その様子は宮守とは大きく異なっていた。 もっと驚いたはずであろうこの宮殿での再会に、井守は3回目の大きな溜息を付く。 井守としては、大聖も宮守も…早くしらふに戻ってほしいと思っているものの、 こればっかりは…時間経過で元に戻るのを待つしかない。 井守は、酒を飲み続けて酔っ払っている宮守と、そんな宮守に泣きついているソマを見ながら、 一先ず先に酔いから覚めてほしい大聖の隣に、腰掛けることで待つ。 ………。 暫く経った後のこと。 身体から完全に神酒を出せないくらいに追い詰められたソマを、宮守が拘束していた。 ますます酔いが酷くなっていく宮守を見て井守が顔を引きつらせるも、 大聖の方は殆ど素の状態に戻ってきているので、大聖の様子の回復には安堵する。 大聖が首を左右に振って、酔っているときに見たのは本当に井守なのか、 と自分の隣に座っている井守の方を向く。…酒で濡れた床を避け、 ソマが使っていたベッドの上に座っている。 「なぁ…。」 「お、やっと気が付いたか。」 「俺の見間違いでなければ、お前…本当に井守だよな?」 「おぅ、その通りだぜ大聖。」 大聖が井守に問うと、井守もニッと笑って頷いた。 その後、大聖が井守に何かを聞こうとしたが、 それより先に、井守が宮守とソマを指差しながら今の状況を説明する。 「大丈夫だ、あんたに神酒とやらを飲ませて酔わせたあのゲス女は、宮守の餌食になってる。」 「宮守も一緒なのか。………で、あの変貌ぶりは一体なんだ?  俺の知る宮守はもっとこう堅実で………。」 「知らねぇよ。そんなもん、おれだって本人に聞きてぇくらいだし。  りもやん…、酒飲んで酔ったらあぁなるんだわ。敵に回したくねぇだろ?  あの豪酒に酔っ払いぶり、あれもあんたの言う大蛇の特徴か?」 「大蛇達が酒好きという説は俺達の間ではよく聞くが…、  あそこまで酷い酔いっぷりもそれなのかと言われても返答しかねるな。」 「そっか。」 井守の説明を受けて、大聖も宮守とソマの方を向く。 今の宮守の様子を見ながら聞いたその説明は、説得力が大きかった。 普段の宮守とのギャップの差に、大聖がよくわかるくらいの苦笑を浮かべる。 井守は、そんな大聖をチラリと見てから後頭部に両腕を回し、組む。 「まっ、何後もあれあのゲス女はもう何も出来やしねぇと思うぜ。  あいつ、身体が酒だって言ってたけど、それをもうほぼ宮守に飲まれちまったみてぇだし。」 「ん?あぁ、あいつか…。」 「おうよ。んで大聖。あんたなんともねぇのか?  あいつ…ゲス女はあんたに何かしてたみてぇだけど、大丈夫か?」 「…あいにく、酔っていたためか俺は何も覚えてない。」 「頭じゃ覚えてなくとも、身体が何か覚えてるこたぁねぇのか?  例えば、腕が痛いとか、脚が痛いとか、増足人でもないのに身体が濡れてるとか。」 「うぅ…そういうことなら、首の辺りが妙にヒリヒリするな…。」 「ゲッ!?マジかよ!!?」 井守の問いかけに対し、大聖も可能な限りで答えた。 身体に何かをされた、大聖がそう答えると井守がギョッとして大聖の首元を覗き込む。しかし…。 「ん〜、けど見たところ首の辺りに攻撃された痕跡は…。」 「ないというのか?」 「あぁ。それっぽい傷痕みてぇのはねぇな。」 「そうか………。」 ━━━━━なら、この痛みは一体なんなんだ…? 不思議がりながら自分の首を眺める井守を見ながら、大聖は怪訝そうな顔をする。 それに関する答えは、考えても出てはこなかった。 なら、もう仕方のないことだから考えるのはよそうと、 宮守と井守がこの宮殿にいる理由を聞こうと口を開いたそのとき、 ソマの腕を乱暴に掴んで、その上身体を引きづらせながら…宮守が自分と井守の方にやってくる。 「あぁ!大聖元にもどったのか!いやぁ〜よかったよかった!」 「宮守、井守もそうだが一体なんでここに…?」 「そんなことはいいだろう?それより、今はとりあえず飲め!」 「勘弁してちょうだいよぉ〜、もう神酒出せないわよぉ〜。」 「なんだと!?まだ10杯しか飲んでないんだぞ!?嘘を言うな!!」 「その杯で10杯も飲んだんなら、おれは十分だと思うんだけどな…。」 「たったの10杯だぞ10杯!!まだ足りないぞ!!」 「宮守…、お前、神酒に限らず酒を飲んだときはいつもそうなのか?」 「知らんっ!!次っ!!!」 「い、いや…つ、次とか言われても………。」 酒に酔った影響なのか、普段に比べ妙な揚々さを感じたが…それは決して快いものではなかった。 酔っている。かなり酔っている。それだけに何をし出すかわからない。 自分が酔う前に翻弄されていたソマだって、宮守の前ではこの有様なのだから。 酔っているのにも関わらず、酒、酒とそれを求める宮守を見て…大聖は唖然としていた。 今の宮守には、普段のクールさなんて微塵にもない。…別人みたいだ。 普段から酒を飲み、こう酔っ払っているかと想像すると…井守がかなりの苦労人にようにも思えた。 困惑している大聖が投げかけた問いには、酔っている宮守に代わって井守が説明する。 「あぁ、おれ達はな。以前海の世界で起こった津波の原因調べに来たんだわ。  海で起こった問題は海にあるって思ってたんだけど、どうも今回は違うみてぇなんだ。  ここに来る前に陸でプロンジェに会って話したら、そう思ってさ。」 「何っ?お前達、プロンジェを知ってるのか?」 「あぁ、前に倭国で話した鯨人の知り合いっつーのはプロンジェのことだ。  あいつには、いろいろ助けてもらってんだわ。…海水側の配達とか。」 「…ん、あ、あぁ…。そういうことか…。…で、彼が原因ではないとわかったから、  もしかしたらこの世界に彼を操った原因があると思って来たということか?」 「は?操られてた?プロンジェが?一体誰に?」 「あいにく、それは俺にもわからないが、海で会ったとき彼は確かにそう言っていた。」 井守の説明に含まれていたプロンジェの名に、大聖はピクリと反応を示した。 プロンジェの行動や深海での熱水マントル崩壊は、 シェリーが危惧していた通り…陸の世界でも影響を及ぼしていたということだろう。 それを知り、しかしそれがプロンジェの意図によるものではないということがわかり、 宮守と井守はこの世界に足を踏み入れたということだ。 プロンジェを見えない誰かが操った…。そのような形としてわからないことは、 ときどきこの幻想世界が関係していると睨む2人の考えは、完全に外れているとは言えないからだった。 この幻想世界で起こったことは、後に陸や海の世界に影響を及ぼすことは、珍しくはないことだ。 そしてそれは、この2人のみならず大聖も懸念している。 井守が説明してくれたなら、今度は自分がと大聖も口を開く。 「そうだな…。俺の方は、海の世界を去った後…黒い炎が巻き上がるのを見てな。  だが、その黒い炎は周囲にこうむった様子はなかった。」 「被害がなかった?それだったら別にいいんじゃね?」 「…被害なし。一見はそう見える。ただ、俺が気にしたのは…、  何もないところに突然それは起こり、浮かび上がったことだ。まるで、“幻”みたいにな…。」 「幻、かぁ…。」 「…おっと、この世界の住民であるソマがそこにいる以上、これ以上のことは話せない。」 「ソマ…?この神酒樽のことか?」 「樽じゃないわよー!!あたしはソ・マ!!ソマっていう神酒の精霊みたいなもんなのー!!」 大聖の説明を聞いて井守がふと疑問の声を口にするも、大聖は首を小さく横に振った。 ソマのことを警戒して途中で口を閉じると、宮守が酔ったままソマの乱暴に持ち上げる。 持ち上げられたソマは、身体の残った部位をバタバタを振り回していた。 そんなソマに、大聖と井守はずいっと迫り、観念するように言う。 「宮守を怒らせたら怖ぇぜ?あんたなんか一瞬でバックリ喰っちまうよ。」 「これ以上の抵抗をするというならそれ相応の目に遭ってもらおう。  観念するんだ。神酒の出す身体がないのでは、お前は何も出来ないのだろう?」 「酒をもっと出せ!!それが出来ないってのか!!?」 「うっ………、ぐぐっ………。」 大聖と井守は構え、宮守は逃さないと掴む。 逃げ場を完全に失ったため、時間稼ぎで身体が再生するのを待つことすら出来ない。 追い詰められたソマは、オロオロした様子で周囲をキョロキョロしていた。 目を3人の誰とも合わすことなく、…その目も泳いでいる。 ソマが部屋の壁の方を向いたとき、何かが羽ばたくような音がした。 それは、まるでソマが無謀を承知で助けを求めた、それに応じるかのようになり始めた。 風が吹き、それは次第に強まったのを感じ、3人は身体を強張らせる。 そして━━━━━。 『バキャアアアアアアァァァァァンッ!!!!!』 宮殿の壁を破壊し、強引に内部にある人物が侵入した。 その姿は、大聖には見覚えのあるものだった。 『G-05 しんにゅう』に続く。